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プロ野球ファンの美学

by て.いとう

先日、ふとツイッターのタイムラインに流れてきた記事を読んだ。

記事を要約すると、ある女性が結婚後にカープ女子になり、そこからグッズ購入や遠征で出費がかさんでしまい、夫に内緒で夜の仕事をしているが一向に借金が減らないという内容だ。

2004年のプロ野球再編問題以降、12球団はファンに向けた球団運営を心がけてきた。そのなかで、女性に向けたマーケティングが有効ということに気が付き、数年前からはSNSなどを使ったソーシャルマーケティングを活用。購買意欲や試合観戦を促すキャンペーンが数多く実施され、神宮球場でも若い女性や主婦の姿をよく見かけるようになった。その象徴がカープ女子であり、横浜ベイスターズの躍進だろう。

プロ野球が”男性の娯楽”だった頃、子どもたちは主に父親に球場に連れて行かれたり、テレビの前で素人解説を聞いて育った。そのなかで、野球観戦のマナーや野球との付き合い方を学んでいった。かくいう私も、祖父や父からそれを学び、学校の先輩からもファンブックには書いていないことを数多く教わった。

だから今でも、野球観戦はテレビ中継で十分だと思うし、球場観戦を年に1回でもする人は十分なファンだと思う。グッズをコンプリートするまで買い占めるなんていう発想もなければ、野球という趣味が私生活を左右するほどの比重になることはない。どんなに野球が好きでも、どこかで「たかが野球だから」という意識がある。仕事が忙しくて、1シーズン球場観戦どころか、テレビ中継も観られずに結果だけチェックしている時期があってもなんとも思わないし、そんな人は世の中にいっぱいいる。それでも彼らは間違いなく、その球団のファンだ。

大人になってから野球にハマると際限がない

危険なのは、そういう段階を踏まずに大人になってから野球ファンになった場合だ。記事の女性のように、ある程度経済的、時間的な余裕がある主婦は特に怖い。野球はその性質上140試合を超える試合が組まれるし、ファームの試合や練習などを入れたらとんでもない数になる。それをいちいち追いかけるなんて不可能だ。

最近のプロ野球ファンにとってツイッターは貴重な情報源になっている。ツイッターは危険な要素があって、タイムラインのなかで「自分対世の中」という図式ができあがってしまう。「私じゃない人たちが現地にいる」「私じゃない人たちがグッズを買った」「私じゃない人たちが私の好きな選手の写真を撮っている」そういった心理が脅迫概念を生んで、置いてけぼりにならないために無理に球場に行ったり、グッズを買ったりしているように見える。

2月1日。ヤクルト球団は2018年度の新商品を一斉発売した。深夜0時になった瞬間公式ショッピングサイトのサーバーが重くなり、アクセスが難しくなる事態がここ数年起きている。何をそんなに急ぐ必要があるのか。誰と競争しているのか。

野球は逃げないし、あなたは立派なファンだ

グッズはキーホルダーしか持っていなくても、ほとんどテレビ観戦しかしなくても、例えファンになったのが今日からだったとしても、自分でファンだと名乗った瞬間にその人は間違いなく、そのチームのファンだ。ファン歴も、どれだけ現地に行ったかも、どれだけグッズを持っているかもどうでもいいことだ。

「ファンになって何年目?」とか、いじわるなことを聞いてくる人がいるかもしれないが、そんなことは気にしちゃいけない。そういうことを聞く奴はたいていニワカである。

確かに野球は幸福や夢をくれる。だけど、それは刹那的なものであり、人生にはもっと大切なものがたくさんある。仕事だったり、家族だったり。

野球に命をかけていいのは、野球を仕事にしている人たちだけ。

数年前にツイッターを始めて、たくさんの人にフォローしてもらった。でも、残念なのはちょっとしたら野球という趣味から離れてしまう人が多いことだ。太く短くではなく、細く長くがちょうどいい。

プロ野球の魅力のひとつはその歴史にある。日本からプロ野球がなくなることはない。来年も10年後も100年後もきっとある。慌てなくても、野球は逃げないよ。

野球という趣味にすがって生きるなんてみじめじゃないか。記事の女性は、子どもはいないらしいけど野球観戦に連れて行ってくれる素敵な旦那さんがいるらしい。だったら、もっとその家庭を大切にして欲しい。そもそも夜キャバクラで働いていたら、中継が観れないじゃん。それこそ、本当にファンなの?って思ってしまう。

野球ファンになるのはいい。最初は夢中になって球場に詰めかけたり、連日ファームを観に行ったりするのもしょうがない。でも、ある時期を超えたらちょっと落ち着いて、野球との程よい距離感を保った、美学のあるかっこいいファンになって欲しい。

球団側も、ソーシャルマーケティングは結構だけど、物で釣るのはほどほどにして、野球の本質的な面白さをちゃんと伝えて欲しい。”カープ女子”を”カープファン”にレベルアップさせるべきだ。なぜなら、その子どもたちが次世代の野球ファンであり野球選手になる可能性があるのだから。長期的な視点で考えたら、それはとても大事なことだと思う。

別に記事の女性のような人をバカにしてるつもりはない。ただ、楽になって欲しい。


て.いとう
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